健全な青少年の受難







「……」


鼻を押さえて、甲太郎の背中に隠れる。
やばい、ホントやばいこの人たち。
何でこの状況で普通にできるんですか?
やっちーはさ、同じ女っていうか同じ形してるし、まあ慣れてるのかなーって思うよ?
だけど、お前ら男だろ!?
あれですか、君たち経験豊富なんですか。
俺はまだ経験浅いんです。


ー、終わったよ」


声をかけられて、恐る恐る甲太郎の肩越しに覗き込んでみた。
さっきまで3体ほどいた敵は、跡形もなくいなくなっている。
相変わらず強い奴らだなあと、無駄に関心してしまった。
ていうか敵はあんなに挑発的な格好してんのに、よく平気でいられるよ…。
俺なんて鼻血出そうだって。
健全な青少年ってこんなもんだろ?


「…あ、」


そう思った傍から、つう、と生温かいものが鼻の下を伝う。
すると、瞬時に隣からサッとポケットティッシュを差し出された。
うわ、俺、凄い感動かも…!
こんなに気が効くのは、今日のバディならやっちーしかいない。
そう思いながらその手の方を見ると、やっぱりやっちーが立っていた。


「大丈夫?クン」
「ん、ヘーキ。サンキュな、やっちー」


笑いかけながら、ティッシュを受け取る。
ていうか俺はいつも、こんな風にやっちーに心配かけてるような気がする。
あー…俺、結婚するならやっちーがいいです。
でもやっちーは、こんな風に女?の裸を見て鼻血出すような男は嫌だよな…。
そう考えると気分は一気に落ち込んだけど、それでも鼻血は止まらないから丸めたティッシュを鼻に詰める。
俺、マジ情けなくないですか?


「…何お前鼻血なんか出してんだよ…」


情けなさから俯いていた俺の頭上に、呆れたような声が降りかかる。
この声は甲太郎のものだ。
でも自分でも何で、とか思ってしまうから、何も言い返せない。
うう、と唸っていると、隣で笑う声がした。


、かわいー」
「は?」
「うん、可愛いよね。純情って感じ!」


九龍だけならともかく、や、やっちーまで…!
可愛いのは君だよ!とか言ったら引かれるかな、ていうか俺が引くからやめておこう。
俺、君とか言わないし。
…つか、俺のどこが可愛くて、純情だって?


「あああああのー…?」
クンは他の男子とはちょっと違う気がしてたけど、こんな感じだからかな?」
「綺麗な顔してるし、がエロ本読んでるとことか想像つかない」
「「ね」」


ね、じゃねーーーーー!!
どうしてわざわざやっちーも九龍も声を揃える!?
俺だってエロ本くらい読むよ!
読むけどやっちーの前でそんなこと言えるか…!!
…ってあれですか、もしかしてこういうところが純情なんですか?
でもいい加減そんな風に俺をこう神聖視?されると色々と困るんですけど。
そう思って近くの甲太郎に助けて…!、と視線で訴えると、甲太郎は面倒くさそうに息を吐いた。
そのため息余計だから!


「2人とも、その辺でやめとけ。が困ってんだろ」


そのとき。
俺は甲太郎が天使のように見えた。
けれどもすぐにいやいやいやと思い直す。
甲太郎の言葉にやっちーと九龍はそれ以上言うのを止めてくれたけど、よくよく考えてみると、天使の羽が生えた甲太郎なんてキモくて仕方がない。


…?」


いやいやいや、は頭の中での言葉だったけれど、実際に首と手を同時に振ってしまっていた俺を、甲太郎が怪訝そうな顔で見てくる。
大丈夫か?お前、という言葉が聞こえてきそうだ。
しかもこの表情だと、頭を心配してるっぽい。
失礼極まりないな、こいつ…。
でもまあ、最初に失礼極まりなかったのは俺かもしれない。
何せ、助けてくれた甲太郎の天使姿を勝手に想像して、キモい、だもんな。


「うーん…ごめんな、甲太郎!」
「は?」
「お、鼻血止まった」


マイペースに謝ったり鼻からティッシュ取ってみたりする俺を、ぽかんと甲太郎が見ているのが分かったけれど、それは無視した。
九龍とやっちーを促して、次の部屋に進む。
そして進んだ先にまたさっきと同じ裸体の女?がいて、また俺は鼻血を出すハメになるのだった。









拍手ありがとうございました!
彼らはドタバタさせるのが一番楽しいです。





2005/09/18