いつも見ていれば、自ずと気付くことがある。ぼくの視線の先にはがいて、の視線の先にはラビがいる。そう気付くのに、そう時間はかからなかった。…そして、ラビの視線の先にはリナリーがいることも。ぼくもも、きっととっくに気付いている。
 ―――だから、思うのだ。


(…どうして、)


 考えないようにしているのに、どうしても。そんな疑問符が浮かんで、ぼくの心を黒く染めていく。


(どうしては、ラビが好きなんだろう)
(ラビはリナリーを好きだって気付くくせに、)
(…どうして、ぼくの気持ちには気付かないんだろう)


 見ているだけ、想っているだけは辛いのだ。に気持ちを伝える勇気もないぼくが、気付かないを責めるのはおかしいってことくらい、分かっているけれど。けれどそうでもしないと、この感情は抑えられない。
 じわりと涙が滲む。はラビを見ているから、気付きそうにもない。


「…ねえ
「ん?」
「どうしてラビなんですか?」


 主語のない言葉。けれどには、これだけでも十分だったのだろう。困ったように笑って、またラビを見た。いつもそう。ぼくを見るのはたった一瞬だ。その事実がまた一層に胸を締め付ける。
 この黒の教団の中で、を慕う者は多い。此処には女性が少ない上にの容姿は女性と見紛う程に整っていて、更に優しく人当たりが良かったりするから、自然な流れなのかもしれない。それなのにも関わらず、はよりによって自分を好きではないラビを好きになった。


「…よく分かんない、けど。話しやすいし、いつだって声かけてくれるし、…俺の名前呼ぶとき、絶対笑ってくれるし。そういうとこ、かな…」


 不毛な恋だと、思った。ぼくもも、…ラビさえ、も。みんな、自分じゃない誰かを好きな人を好きで。叶わないって分かってるのに、止められない。だけど、だから、にも言えない。ラビは止めて、ぼくを好きになってください、なんて。…言える筈が、ない。片思いでも諦めきれないことは、身を持って痛い程実感している。ぼくが誰かにを諦めろって言われても、簡単に諦めることなんてできないように。…もきっと、そうなのだ。






Square relation





( ほんとうはきみにすきになってほしいのだけれど )
( 2007/4/8 )