日常CHANGE 「、面貸せ」……あの、俺、何か悪いことでもしたでしょうか。フツーに平々凡々な生活を送ってきたはずなのに、何で俺の前に悪名高い伊達政宗が立ってんのっ!? 同い年なのに、何なんだろうこの迫力…。俺、対峙してるだけで冷や汗だらだらです。しかも何でか接点ないはずの俺のこと知ってるし、っちょ、何も言ってないのに勝手に連れて行こうとしてるし!ちょっとどころか、かなり怖いんですけど!!もしかして俺、ボコられる!? パニックに陥ってる間に連れて行かれた先は、人気のない教室だった。うちの高校はマンモス高で、使ったことのない教室が何部屋かある。ここだって入ったことのない教室で、ますます頭が混乱してきた。ここどこマジで…! 「Hey、」 「はっ、はい!」 訳も分からずすいませんでした!と謝ってしまいそうになる衝動は、口を押さえることで食い止めた。もちろん伊達政宗は怪訝そうな顔で俺を見ている。仕方ないじゃん怖いんだよ…!今の俺の心境は、正に夜の街で怖いお兄さんに囲まれた時のそれによく似ていると思う。っていうか、伊達政宗は怖いお兄さんそのものだ。 ていうか俺、心ん中とは言え、フルネームで伊達政宗って連呼しすぎじゃね…? 「何キョドってんだ?」 「や、べ、べつになんでも…」 目の前の顔を見てられなくて目を逸らす。俺、なんで此処にいるんだろう…。気失っちゃった方が楽なような気ィする。でも俺、そこまで神経細くないしな…。 でも次の言葉を聞いた瞬間、マジ卒倒するかと思った。 「お前、俺と付き合え」 「はい。……って、ぇええ!?」 何それなにそれなにそれ!!!今この人、なんつった!?付き合えって言わなかった!?思わず俺、頷いちゃったじゃんか!(だって有無を言わしてくれそうな雰囲気じゃないんだよ…!) 視線の先で伊達政宗は、なにやら楽しそうに笑っていた。俺が即答したのには驚いたようだったけど、それすらもこいつにとっては面白いことでしかないんだろう。…一体、何考えてんだ。 「一回寝てやっただけで彼女面するしつこい女がいてよ。俺に本命できたと思わせれば、諦めてくれんだろ?」 「…つまり、俺に恋人の振りしろってのかよ」 「Yes! 頭の回転が速くて助かるぜ」 褒められても嬉しくない…。ていうか理由が最低だ。フツーは彼女としか寝ねーだろ! 「男に二言はねぇよなぁ?」 あーもーマジ最悪…。そんなこと言われた後にさっきのは勢いでした、なんて言ったら(いや、多分気付いてるんだろうけど)、明日っから学校で俺の居場所がなくなりそうな気がする。 小さくこくりと頷くと、伊達政宗はOK、と口の端を吊り上げた。 「…何で、俺な訳?」 悔しいけど、伊達政宗なら相手は選り取り見取りだと思う。可愛い子だって綺麗な人だって、例え振りでもこいつと付き合えるんなら、それこそ二言なんてなく承諾するはずだ。それなのにどうして、わざわざ俺を選んだんだろう。 「女だと二の舞になりそうだろ。それにお前の顔、好みなんだよな」 「……は?」 気付けば伊達政宗がほとんど俺との間に距離がないほど近くに迫っていた。それに驚いて一歩引こうとした俺の腰を引き寄せて、伊達政宗はまた楽しそうに笑う。 「よろしく頼むぜ、honey」 そうして俺は簡単に唇を奪われた。
( 2007/07/21 )
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