手を繋いで握り潰してしまうのが怖いと言ったら、はきょとんとして、じゃあこうすればいいよね、と俺の服の裾を掴んで笑った。最初からそれが正しかったみたいに、満足気に。


「服伸びたらごめん」


 それから悪戯っこのような顔をして歩き出したに服を引っ張られて、戸惑いながらもその後をついていく。
 俺に触れるのが好きだとは言う。温もりを感じられるのが幸せだと。そんなの、俺だってそうだ。俺だってに触れたい。手を繋いで、強く抱き締めたいと思う。でも力加減の出来ない俺は、そんな恋人同士にとっては当たり前の行為すら出来ない。
 そんな俺と付き合っていて、は嫌になったりしないんだろうか。


、」
「んー?」
「お前、嫌になんねぇのか」
「…なにを?」


 そう返してきたくせに、立ち止まって俺を見たは俺の言葉の意味が分かっているようだった。睨み付けてくる、こいつは怒ってる。


「静雄は嫌になんの?静雄が怖がってるの知ってて、それでも触れようとする俺のこと」
「んなわけねぇだろ!」


 即座に否定すると、はあからさまにほっとした表情を見せた。何でもない振りをしてても、もしかしたらいつだって不安だったのかもしれない。


「俺も、嫌になんかならないよ。…静雄が傍にいるだけでも嬉しいのに…なるわけ、ない」


 震える声にようやく、俺はを傷付けてしまったんだって気付いた。こういう時、思い切り抱き締めてやりたいのに出来ない自分が嫌になる。だから変わりに俺も同じだと言葉で告げると、は本当に嬉しそうに相好を崩した。そんなのことが、堪らなく愛しかった。

feel

( 2011/10/30 )