Lovebirds 腰に手を回して背中に額を預けると、静雄の匂いがした。俺の突然の行動に、静雄が肩越しに不思議そうに視線を向けてくるのが分かる。「どーした?」 「…んー…」 ………言えない。まさか、静雄と仲良く話している新羅と京平に嫉妬しただなんて。女の子だけじゃなくて男友達にまで妬いたって知られたら、絶対引かれる。 「、こっち向け」 俺の態度を怪訝に思ったのか、そう言う静雄にいやだと無言で首を横に振ると、腕を掴まれてぐいっと引っ張られた。 「うわっ」 踏ん張ることも出来ずに体勢を崩した俺を軽々と抱き上げて、静雄は下から覗き込んでくる。だけど俺は女々しいことばっかり考えて相当変になってるだろう顔を見られたくなくて、視線から逃れるために今度は首に抱き着く。 「…オイ」 耳元で、呆れたような声と小さな溜め息。嫌われたかと思ってびくりと強張った体を、優しく撫でてくれる静雄の手にほっとした。…良かった、嫌われたわけじゃないみたいだ。 「…あのよ。俺らもまだいるんだけどな」 「うわー、顔真っ赤!」 「ちょ、言うなよっ」 ふたりがいるのも構わずだった俺たちに、京平は居心地悪そうに深く息を吐いて、新羅は俺が必死に隠そうとしていることを簡単にバラしてしまう。つんつんと俺の頬をつついてくる新羅の指先を払い除けると、新羅はにやりと笑った。 「そんなに静雄が好き?」 「…大好き」 からかわれるだけだと知っていても、それだけは否定するわけにいかなくて、頷いて抱き着く力を少し強める。何となく、恐る恐るではあったけど静雄もそうしてくれたような気がした。 「…門田、新羅」 「おう」 「臨也は近付けないようにしてあげるねー」 静雄の声にふたりはそれぞれそんな言葉を残して、何故か屋上から出て行った。広い屋上に残ったのは、俺と静雄のふたりきり。 …ていうか、何で臨也の足止めをする必要があるんだろう?せっかく静雄とこうやっていられる時に、臨也の邪魔が入らないのはありがたいけど。そう思いながら、静雄の温もりを堪能する。 そこで気付いたのが、さっきは俺がそう感じただけだったけど、今度は間違いなく静雄が俺を抱き締めてくれているということだった。いつもは力加減が出来ないと言って手を添えるくらいなのに、どうしたんだろう。…や、すごく嬉しいんだけど。ほんとに。でも、嬉しすぎて照れる。 「…」 「ん?」 「煽ったのお前だからな」 「え。…んぅっ!?」 身に覚えのないことを言われて、不思議に思いながら顔を上げた瞬間。後頭部を固定されて、唇に噛み付くようなキスをされた。ああ煽ったってそういうことかと思った時にはもう、静雄の肩越しに青い空が広がっていて。京平と新羅を帰した理由と臨也の足止めの理由を、身を持って思い知らされるのだった。
( 2011/10/29 )
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