「さみー」 隣を歩くが、コートに両手を突っ込みながら、仏頂面でそう呟いた。俺はその様子に、思わず吹き出す。薄着な俺とは違って、はぐるぐる巻いたマフラーで口元までしっかり隠しているし、耳あてもしている。さっき着替えてるのを見たときは、背中にホッカイロも貼っていたのに。 「お前、それでまだ寒いのかよ」 「…つか、俺には何でお前がそんなに飄々としてられんのかが分かんねーよ」 じとりとした目で睨まれて、肩を竦めた。そう言われたら、そんなに寒くないから、と答えるしかない。でもそんなことを言ったら、が更に不機嫌になるのは目に見える。 「手ェ繋いでやろっか」 「…いらね。繋ぐんなら利央のがいー」 「なんでだよ」 さすがにむっとした。それを隠さずに問うと、は悪びれた様子もなく、だってと続ける。 「あいつ絶対お子ちゃま体温だもん」 「あー、確かに」 あのでかい図体が隣にいたら、それだけでも寒さを凌げそうな気もするけど。きっとあいつは、体温も高いに違いない。 サン酷いよぉ!と喚く姿が目に浮かぶ。 「準太は何か冷たそう」 「優しいから?」 「言ってろばーか」 げし、と蹴りを入れられたので、仕返しにコートのポケットに冷えた手を突っ込んで、中の手をぎゅうっと握ってやった。外気に触れていなかったおかげで、の手は俺の手よりずっと温かい。の温もりが一瞬にして俺に移る。 はその逆だったんだろう。びく!と跳ねる肩に、くくっと笑った。 「つっめて…!何考えてんだよ!」 「俺の手冷たいから、に温めてもらおうかと思って」 「…どこが優しいんだよ」 ぼそりと呟いたのを零さず拾って、もう片方も同じようにしようとする。それを察知したは、すかさず半身をずらして俺の手から逃れた。 「冗談だって!…もー、ホッカイロやるからそれで我慢しろよ」 「サンキュ」 不服そうに差し出された小さめのホッカイロを受け取るのと同時に、握り締めていたの手を放した。 「あ、」 「ん?」 「…いや、別に何でもない」 は言葉を濁したけれど、何となく俺はその続きが分かるような気がした。 ホッカイロで温めている左手より、少しの間だけどと繋いでいた右手の方が温かい。名残惜しさすら感じるくらいに。 俺の想像だけじゃなく、本当にもそう思ってくれてたらいいのに、と、2人肩を並べて歩きながら、ぼんやりとそう思った。 寒さを凌ぐ方法
( 2010/12/26 )
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