と俺がもう一度顔を合わせたのは、彼の名前を覚えてからちょうど一週間後のことだった。 一週間ぶりのは自販機の前で、難しい顔をしていた。その顔がこの間祐希と笑い合っていた顔と何となく結び付かなくて、何がそんなにを悩ませているのか少しだけ気になった。だから一緒にいた要と春は先に教室に行かせて、その背後に立つ。 「何やってんの?」 「んー…イチゴオレとバナナオレどっちがいいと思う?」 話し掛けた俺の声を、どうやら祐希のものだと思ったようで。は突然話し掛けられたことに不審がるわけでもなく返事を返したあと、くるりと振り向いた。その目が俺を捉えた瞬間、大きく見開かれる。 「…悠太、くん」 「………わかるの?」 俺と祐希は声も姿もそっくりだ。一応前髪の分け目は違うけど、それでも一瞬だけぱっと見て俺か祐希か判断できる人はほとんどいない。 あてずっぽうだったらまだわかる。だけどは、祐希だと思って振り向いた瞬間に驚いた様子を見せた。そして俺の名前を呼んだあと、慌てて君付けした。ということはあてずっぽうなんかじゃなくて、俺が悠太だって、確信していたということ。 「え、…あ、うん」 俺の言葉にどこか照れ臭そうに笑うが、記憶の中のと重なった。祐希だけじゃなくて俺にも同じように笑ってくれたことにほっとする自分がいて、ちょっと戸惑う。この間から俺は、どうしてこんなにもを気にしてるんだろう。やっぱり祐希の意外な一面を引き出してくれているからだろうか。それもあるだろうけど、それだけじゃない気もする。 …何かもう考えるのも面倒臭くなってきたな…。理由なんてどうでもいいか。が気になることには変わりないんだし。 「…イチゴオレ、かな。俺のオススメとしては」 「え?」 「どっちにするか迷ってたんでしょ?イチゴオレにしなよ」 ポケットから出した小銭を自販機に投入して、点滅したイチゴオレのボタンを押す。ガコンと落下したイチゴオレを取り出して、そのままに手渡した。 「それ、あげる」 「いーの?」 「いつも祐希がお世話になってますってことで。…俺だってわかってくれたのも、嬉しかったし」 「――サンキュ」 最初は戸惑っていただったけど、理由を言えばはにかむように微笑んでくれた。それからも同じようにイチゴオレを購入して、俺に差し出してくる。 「じゃあこれは、祐希にお世話になってますっていう俺からのお礼ね」 「…どうも」 受け取りながら、こないだ祐希が言ってたの評価を思い出す。 『頭もいいし顔も綺麗なマンガの登場人物みたいな性格男前』 頭の良さはわからないけど、かっこいいとか可愛いじゃなくて綺麗という表現の仕方は、にぴったりのような気がした。こういうのもユニセックスって言っていいのか分からないけど、とにかく男っぽくも女っぽくもない、大人びた顔立ちは綺麗だった。イチゴオレを買い返してくれたところなんかも、確かに性格男前だと思う。 「あ、俺、っていうんだけど」 「知ってる。この間5組で会った時、祐希が教えてくれた」 「え、祐希が?な、何か変なこととか言ってなかった?」 だけど祐希から聞いただけじゃ、こうやって恥ずかしそうに顔を赤くして、あたふたするのことは分からなかった。思わずぷっと吹き出すと、やっぱり変なことを言ったんじゃ、と今度は顔を青くする。 性格は確かに男前らしい。だけど、たまにかわいいところがある。それが、祐希じゃなくて俺のに対する印象だった。 overwrite
( 2012/01/14 )
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